もちろん、これに似たようなことは、現代の会社でもありますね。社長や上司の私事で、あちらこちら奔走(ほんそう)する社員。本来の業務とは関係ないとはいえ、断わるわけにもゆくまいし。
もっとも、サラリーマンの場合は私企業に仕(つか)える身ですから、さまざまなことを命じられてもすべて仕事のうちと割り切れるかもしれません。しかし、浅野内匠頭長矩は、あくまで一国一城の主(あるじ)。その誇りを踏みにじられたからこそ、長矩は脇差を抜いた。
「公のために尽くす」ことを自らに課した彼の武士道が、あの場面で引き下がることを許さなかったのです。そこに目を向けなければ長矩の起こした刃傷事件は理解できませんし、「忠臣蔵」という物語が後世に伝える大切なメッセージも明らかにはならないと私は思っています。長矩は刃傷に及んだあと、明確に「余は乱心ではない」と言っていたのです。
【コメント】
次回からは、大石内蔵助の話です。
また来週、金曜日に更新いたします!