たしかに、斬りつけた相手は吉良でした。しかし、このとき長矩の胸に渦巻(うずま)いていたものは、将軍綱吉への怒りでした。
桂昌院の叙位問題を知った瞬間に、彼は自分が何のために苦労させられてきたのかを悟ったのです。公のための仕事だからと思って辛抱して務めてきたのに、生母の栄誉願いという将軍の私事が大きくからんでいたとは……。役目を笠(かさ)に着て威張る吉良のみならず、公私を混同している将軍に対して浅野長矩は刀を向けたのだと思います。
【コメント】
内匠頭の思いの解説は、まだ続きます。
また来週、金曜日に更新いたします。