そもそも吉良の横暴に業を煮やしていた上に、急の式次第変更に右往左往させられていた長矩です。この科白に彼の堪忍袋の緒が切れました。
「おのれ上野、人前で田舎大名とは!」
長矩が脇差(わきざし)に手を掛けると、上野介は相手を馬鹿にした調子で「ふん」と鼻を鳴らし、背中を向けて立ち去ろうとした。もう、長矩の怒りは止まりません。
「待て!この間の恨み、覚えたるか!」
この声に振り向いた上野介の頭上に振り下ろされる長矩の脇差。しっかと顔面を捉(とら)えたものの、烏帽子(えぼし)の金輪(かなわ)が上野介の命を救いました。
刀を弾(はじ)かれた長矩は、再び脇差を振りかざす。眉間(みけん)から鮮血を流しながら逃(に)げ惑(まど)う上野介。驚いた梶川が「浅野殿、殿中でござりまする!」と、大力に物を言わせて廊下に組み伏せる・・・・・・これがご存じ、松の廊下の顛末(てんまつ)です。
【コメント】
ではまた、来週金曜日に更新いたします!