ところでこの聖徳太子憲法、全部で何条あったかご存じでしょうか。たぶん、「そんなの十七条に決まってるじゃないか」と言う方が多いでしょうね。たしかに、日本史の教科書にはそう書いてあります。歴史の授業をあまり熱心に聞いていなかった人でも、「聖徳太子といえば十七条憲法」と即座に答えられるに違いありません。
でも太子の憲法は、正しくは八十五ヶ条です。どうしてその中の十七条だけが歴史に残ったのかは、後でご説明しますが、その八十五ヶ条は、それぞれ十七条ずつある五本の柱からなっています。一番目は、国家公務員の服務規定として書かれた「通蒙(つうもう)憲法」と呼ばれる部分。あとの四つは「政家(せいけ)憲法」(政治家)、「儒士(じゅし)憲法」(儒学者)、「神職(しんしょく)憲法」(神職者)、「釈氏(しゃくし)憲法」(僧侶)というものでした。太子は世の中の中心で働く人々の心構えを、職業別に説(と)いたわけです。
一般に「十七条憲法」として知られているのは、この中の「通蒙憲法」が後代の人によって改変されたもの。そこには万人に通用する教訓もたくさん入っていますが、そもそもはお役人たちを戒めるために作られたものでした。
たとえば、「和を以(もっ)て貴(たつと)しと為(な)し、忤(いさか)うことなきを宗(むね)とせよ」で始まる有名な第一条。役人が上司や同僚と諍(いさか)いを起こしているようでは、何が世のためになるかを平常心で考えることができない、ということでしょうね。現代でも、出世のために仲間の足を引っ張っている人々は少なくないんじゃないでしょうか。
賄賂を取ってはならないと定めたのは、第四条です。「餐(あじわいのむさぼり)を絶ち、欲(たからものはしみ)を捨て、訴訟(うったえ)を明らかに辨(さだ)めよ」という冒頭の一文を知っただけでも、今の公務員の心に何かが響くでしょう。役人が賄賂を受け取れば、財力のある者だけがうまい汁を吸って、貧しい者が泣きを見る世の中になってしまうぞ。太子はそう皆告しています。
【コメント】
おもしろいですね。
ではまた、来週金曜日に更新いたします!