第3章・勝海舟 「恨みを残さず、徳を残せ」②

 一方の薩摩では、岩倉具視が勝海舟を訪ねたことを聞き及んだ側近の桐野利秋(きりのとしあき)が、

「西郷先生、喜んでください。どうやら勝先生がわれわれと政府のあいだに立ってくださるようです。いずれ、こちらにお見えになると思いまする」

 しかし西郷さんは、言いました。

 「桐野。勝先生は来もうさん。大久保や木戸たちが勝先生の言われることを呑めるわけはごわさん」

 どんなに遠く離れていても、勝と西郷の二人はお互いの心中が読めたのです。敵と味方に分かれていたとはいえ、幕末のあの動乱を切り回した二大巨頭は、肝胆相照(かんたんあいて)らす仲だったというわけです。


【コメント】

いい話ですねぇ~。
ではまた、来週金曜日に更新いたします!