「おまえたちは、昔の苦しい時代を忘れたか。貧しい時代を思ったら、今の豊かな暮らしに感謝しなけりゃならない。そもそも金貸し業というのは、この米山検校一代の仕事。おまえたちの仕事じゃない。おまえたちは、それぞれ自分の仕事で生活してるじゃないか。この証文を一枚でも残したら、おまえたちに恨みが残る。だから、わしはこれを焼き払って、おまえたちに徳を残すのだ」
子孫に美田(びでん)を残さずという言葉はありますが、これほど潔(いさぎよ)く自分の遺産を捨てるとは。この言葉を聞いた子や孫たちは「私たちが悪うございました。たしかに仰(おっ)しゃるとおりでございます」と米山検校を拝んだそうです。このとき米山検校が残した「徳」が引き継がれたからこそ、後にその血筋から勝海舟のような人物が登場したのではないでしょうか。
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