さて海舟の曾祖父にあたる山上銀一さんというお方は、私の故郷から一つ峠を越えたところにある長鳥という土地に生まれました。この銀一さん、気の毒なことに生まれつき目が不自由。やがて片貝(かたかい)という土地で按摩(あんま)修業を始めたんですが、頭がいい上に気の強い性分だったせいか、地元の人たちとしっくりいってはいない。そこで三国(みくに)峠を越えて江戸へ出たのが、十二歳のとき。その際に行き倒れになってしまうのですが、石坂宗哲(そうてつ)という人物に助けられ、それを縁に水戸家の中間(ちゅうげん)部屋に按摩として出入りするようになりました。
いつも部屋で博打(ばくち)に興じていた中間たちは、軍資金が底を突くと銀一にお金を借りました。博打場の借金は、勝ったら倍にして返すのが掟(おきて)。それを貸してやっているうちに、銀一さんは一両二分もの大金を手にしたそうです。これはもう、才能というしかありません。目は見えないわけですから、計算力や記憶力が並外(なみはず)れて高かったんですね。
【コメント】
この続きはまた、来週金曜日に更新いたします。
今夜は、21時~ BS-TBSにて「三波春夫 大忠臣蔵の世界 演歌若手三人衆~山内惠介・市川由紀乃・三山ひろしが挑戦!」が再放送されます。
どうぞご覧くださいませ。