私が勝海舟に親しみを感じるのは、二つばかり個人的な理由があります。一つは、かつて歌舞伎座(かぶきざ)で上演した『あばれ太鼓』という芝居で、彼の父親である勝小吉(こきち)を演じたこと。そのときの主題歌に「親は我が子に命懸け」という歌詞がありましたが、小吉が息子の麟太郎(りんたろう)に注(そそ)げるかぎりの愛情を注ぎ込みながらも厳しく、手塩にかけて育て上げた事情を描いたドラマで、お客様にたいへん好評を頂きました。
もう一つの理由は、海舟の曾祖父が私と同じ越後(えちご)の出だということです。高田屋嘉兵衛もそうですが、ご先祖様が自分の故郷と同じ土地の出身だと聞くと、私はそれだけで情が移って、誇らしい気持ちになってしまうんですね。勝海舟は生粋(きっすい)の江戸っ子のように思われていますが、元をたどれば越後の血が流れている。実際、「勝海舟の粘(ねば)り強さは、深い雪の中で半年も暮らす越後人特有のものだ」という意味のことを書いていらっしゃる歴史家もいます。嬉しいじゃありませんか。
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