第3章・勝海舟 「日本人はみみっちいぜ」①

 さて、それではこの時、勝海舟はどのようにして大国イギリスを動かしたのか。「対馬にロシア上陸」という報告を受けた勝海舟、最初は「これは困った」と思案しました。ロシアが相手じゃ、俺が行ったってしょうがない。彼(か)の力を制するには、彼の力をもってするに限る。そう決めて、勝海舟は長崎奉行を通じてイギリス領事に事情を説明しました。

「ロシアが対馬に居座っているが、これはどう考えても国際法に違反しています。こんな馬鹿な話はありません。イギリスの立場から見ても、許せることじゃないでしょう。ここは一つ手を貸してはいただけないものでしょうか」

 この申し入れで紛争が回避できたのですから、大した外交手腕です。発想が柔軟で、しかも思い切りがいい。我が実力をよくわきまえ、つまらない面子(めんつ)にはこだわらない。こういう考えの持ち主だったからこそ、後に日本が明治維新という夜明けを迎えるとき、大きな役割を演じることができたのでしょう。


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