ところで、幕末のベストセラーになった『中朝事実』の中で、とくに山鹿素行の学問の真髄が読み取れるのは『大星伝(だいせいでん)』だと言われています。
ここで言う「大星」とは、夜空の星のことではありません。空に浮かぶいちばん大きな星、つまり太陽のこと。素行は「天子の御心」を太陽にたとえ、それを仰ぎ見ながら天に恥じないような立派な行ないをしなさい、と説いているのです。
この山鹿素行の思想は、元(もと)を質(ただ)せば聖徳太子(しょうとくたいし)の学問に行き着くと言われています。事実、素行は五十七歳の秋に、聖徳太子が編纂(へんさん)した歴史書『先代旧事本紀大成経(せんだいくじほんぎたいせいきょう)』を一日で書き写したほど、太子の学問を熱を入れて学んでいます。そこで吸収した思想が『中朝事実』の基礎になっているわけです。
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