「長矩(ながのり)様に、国元にご側室をとおすすめ申し上げたら、お叱りを受けた。家老の立場で申し上げたが、内蔵助(くらのすけ)としては恐縮の至りであったよ。しかし、もしお世継(よつ)ぎがおいであそばしたら松の廊下では我慢なされたのではないかと思われる。しかし、それは言うまい。それが人間というものよ。運命といえるかもしれぬ」(大石内蔵助)
仇討ちに込めた内蔵助の「覚悟」①
盆や正月に帰省することを、くにへ帰る、と言いますね。まるで外国から帰国するような言い方ですが、生まれ故郷を自分の「国」だと思う気持ちは、私たち日本人に共通のものではないでしょうか。
実際、同じ日本の中でも、地方によってその文化はさまざまです。生活習慣や食べ物はもちろん、言葉だって違う。テレビの影響で標準語がかなり広まったとはいえ、方言は何とも味があって良いもの。方言を「お国言葉」ということから考えても、やはりそれぞれの地方は一つの「国」なのです。
ですから本来なら、各地方が自分たちの色を出しながら、生き生きと暮らしていくのがあるべき姿。「国」同士が競い合うようにお互いを高めていけば、それは日本全体を活性化することにもつながるというものでしょう。
ところが残念なことに、今は地方がそれぞれの特色をどんどん失っているような気がします。いちばんの原因は、中央の政府が予算を含めたさまざまな権限を握って手放そうとしないことでしょう。そういう今の日本のあり方を見ていると、徳川時代から何も変わっていないように思えます。
【コメント】
本日から「大石内蔵助」の始まりです。
また来週金曜日に更新いたします。