このリコルドの命令に嘉兵衛さんが立腹した理由は、ただ一つ。そこが日本の領土だからです。ロシアで囚われていたとき、自分はロシアの国法に従って行動した。しかし、この国後は日本の領土。そうであるからには、ロシアの艦長といえども日本人に対する命令権などない、ここできちんと筋(すじ)を通しておかなければ、日露の紛争は絶対に解決しない。そう思っていたのでしょう。
「ここは日本の領土だ。日本に来たら日本の国法に従わねばならぬ。二人がここへ戻るかどうかは、お上(かみ)の考えること。わしにも命令する権利はない」
そう言い放つと、嘉兵衛さんは脇差を抜いて自分の髪の毛を切り取り、懐紙(かいし)に包みました。
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4日(日)19時30分からは、NHKBSプレミアム「新BS日本のうた」の“三波春夫没後20年特集”のコーナーでお楽しみください。