第1章高田屋嘉兵衛 かくして一件落着②

 このリコルドの命令に嘉兵衛さんが立腹した理由は、ただ一つ。そこが日本の領土だからです。ロシアで囚われていたとき、自分はロシアの国法に従って行動した。しかし、この国後は日本の領土。そうであるからには、ロシアの艦長といえども日本人に対する命令権などない、ここできちんと筋(すじ)を通しておかなければ、日露の紛争は絶対に解決しない。そう思っていたのでしょう。

 「ここは日本の領土だ。日本に来たら日本の国法に従わねばならぬ。二人がここへ戻るかどうかは、お上(かみ)の考えること。わしにも命令する権利はない」

 そう言い放つと、嘉兵衛さんは脇差を抜いて自分の髪の毛を切り取り、懐紙(かいし)に包みました。


【コメント】

この続きは、また来週金曜日に更新いたします。

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