「平蔵、金蔵、わしの形見じゃ。弟の金兵衛に届けてくれ。陣屋に事の経緯(いきさつ)をお話し申し上げ、お役人衆の命令に従うのだぞ。わしはこれから、リコルドと一喧嘩しなくちゃならない。命懸けでやるつもりだから、二人とも後は頼んだよ」
二人がボートに乗って陸へ向かった後、嘉兵衛さんとリコルドの大喧嘩が始まりました。リコルドは、嘉兵衛さんが手紙も持たせず二人の部下を上陸させたことが解(げ)せません。
「彼らに証拠の手紙を持たせなかったのはなぜだ」
「その必要はない。わしがあの二人を上陸させたのは、彼らを助けるためだ」
「なに!あなたは、まだ私を疑っているのか」
「ああ、疑っておるわい」
「ならば嘉兵衛、あなたをもう一度、カムチャッカへ連れて行くぞ!」
リコルドは声を荒げました。それでも嘉兵衛さんは落ち着いたもの。初めから国に命を捧げているつもりですから、そんな脅しに動ずるわけもありません。
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今夜は、19時~BSテレ東「徳光和夫の名曲にっぽん ~三波春夫の歌世界~」でお楽しみください。