第1章高田屋嘉兵衛 捕虜となったロシア艦長②

 このとき択捉の役人は、ロシアの艦長を冷たくあしらいながらも、「国後(クナシリ)へ行けば君たちの要求は通るだろう」と伝えました。そこでゴロヴニンが船を出して国後島へ行ってみると、意外なことに役人たちが歓待してくれました。その上、陣屋でご馳走(ちそう)を振る舞ってくれるというのです。

 その際、副艦長のリコルドは、念のため武器を持っていくよう艦長に進言しました。択捉で冷たく追い払われたので、不審に思っていたのでしょう。

 けれどもゴロヴニン艦長は、

 「いや、なまじ武器など持っていけば、かえって紛争のもとになるだけだ」

 と、丸腰で出かけて行きました。なかなか立派な軍人ですね。ところがリコルド副艦長の不安が的中。宴席を設(もう)けての歓待は松前奉行所の仕掛けた罠(わな)でした。ご馳走が済んだとたん、ゴロヴニンは同行した七人の部下もろとも捕らえられてしまったのです。


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