第1章高田屋嘉兵衛 幕府の命でエトロフへ⑥

 蝦夷へ来て三年目の寛政(かんせい)十年(一七九八)、嘉兵衛さんに新たな出会いがありました。幕府の開拓使の一員として蝦夷を訪れていた高橋三平(たかはしさんぺい)、三橋藤右衛門(みつはしとうえもん)や近藤重蔵(こんどうじゅうぞう)です。この人たちは、かねてからロシアの南下を懸念して、国としての蝦夷地警備の重要性と開発を提言していました。中でも高橋三平と近藤重蔵が、択捉島への航路を開くのに手を貸してくれるよう、嘉兵衛さんに頼みました。
 直線距離にすれば、択捉と国後はさほど離れてはおりません。でもその途中は三筋(みすじ)の潮流が複雑に入り組んでいて、船で渡るにはきわめて危険な海。迂闊(うかつ)に渡ろうとすれば、場所によって高さが五メートルもあるという波に飲み込まれて難破してしまう。そんなところに初めて安全な航路を見つけるのですから、まさに命懸けの仕事です。


【コメント】

この続きは、また来週金曜日に更新いたします。
本日20時より、BSテレ東「昭和は輝いていた」にて、三波春夫の“長編歌謡浪曲”が紹介されます。
お時間が合われましたら、どうぞご覧くださいませ。