さらに嘉兵衛さんは、昔から蝦夷の地で暮らしていたアイヌの人々のあいだでも大変な人気者になりました。
日本列島の先住民であるにもかかわらず、気の毒なことに北へ北へと追いやられてきたアイヌの人々は、蝦夷でも松前(まつまえ)藩による支配の下、ひどい仕打ちを受けていました。たとえばアイヌが鮭(さけ)を一本持ってきて「買ってください」と言えば、足元を見て冷(ひ)や飯(めし)一杯と交換する。そのころ北海道には米がなかったので、それでもアイヌの人々は応じるしかなかったのです。また、十本まとめて買ってやるときは、数をごまかして十本分の値段で十二本をせしめるということもありました。鮭の数を勘定するとき、一の前に「始め」、十の後に「上がり」をつけて水増ししていたというんですから、ひどい話じゃありませんか。そんな横暴が平気で行なわれていたのです。
【コメント】
嘉兵衛さんによる改善策は、次回に。
また来週、金曜日に更新いたします。