第1章高田屋嘉兵衛 二十六歳の若さで千五百石船を③

 その奉公先を出て兵庫に向かったのが、二十一歳のときでした。どうやら嘉兵衛さん、わけあって淡路島にいられなくなってしまったようなんです。原因は、地元の若衆宿と反目したこと。当時、集落の若い衆が集まる若衆宿は、地域社会の中でひじょうに大きな力を持っていました。ところが嘉兵衛さんは、本村から在所に奉公に来たよそ者だったにもかかわらず、言いたいことは遠慮なく言うし、喧嘩も強い。それで煙たがられてしまい、「若衆八分(はちぶ)」の憂き目に遭(あ)ったわけです。おまけに、若衆宿の本拠だった網元の娘が、嘉兵衛さんにぞっこん惚(ほ)れ込んでしまいました。嘉兵衛さんほどの男ですから惚れられるのも当たり前なんですが、これはいかにも具合が悪い。そんなこんなで身の危険さえ感じた嘉兵衛さん、淡路島を出る決心をいたしました。


【コメント】

強いわ、モテるわ、の嘉兵衛さん。
この続きはまた、来週金曜日に更新いたします。