第1章高田屋嘉兵衛 二十六歳の若さで千五百石船を④

 そして兵庫で身を寄せた先が、廻船問屋をしていた堺屋(さかいや)喜兵衛の家。淡路島にいた当時から瓦船(かわらぶね)を操(あやっ)っていた嘉兵衛さんは、ここでさらに操船技術に磨(みが)きをかけました。やがて一人前の船頭となり、新酒運搬競争で華麗なデビューを果たしたわけです。

 物流の発達が経済の発達に結びつくのは、今も昔も同じこと。どんなに良い品物を作っても、それが全国津々浦々(つづうらうら)に行き渡らなければ経済は発展しないし、人々も幸せにならない。それを嘉兵衛さんは人一倍よく知っていたのでしょう。彼はさらに自分の仕事を広げて国の経済を発展させるべく、辰悦丸という千五百石の北前船を建造して蝦夷(えぞ)へ乗り込みました。


【コメント】

商人としての採算は勿論ですが、心にあるのは、世の為、人の幸せの為の嘉兵衛さん。

ではまた来週金曜日に更新いたします。