新酒が出来上がると、回船業者たちは西宮(にしのみや)の戊(えびす)神社で安全祈願の御札をもらい、ヨーイドンで船を出す。この新酒運送競争に、ある年、他の船とは段違いのスピードを持つ男が現われました。なんと二番手より六日間も早く灘の新酒を江戸に届けたというのですから、勝負にもなりません。その快速男こそ、後の豪商・高田屋嘉兵衛だったのです。
みんなが欲しがる物をいち早く運んでくれるのですから、「これは大変な男が現われたぞ」という噂(うわさ)が江戸中に広がったのも当然のこと。圧倒的なスピードで江戸にたどり着いた高田屋嘉兵衛は、誰よりも高い値段で灘の新酒を引き取ってもらえました。
では、なぜ嘉兵衛さんは人より六日間も早く江戸に行けたのか。言うまでもなく、それは彼が誰にも真似(まね)できない優れた航海術を身につけていたからです。
【コメント】
高田屋嘉兵衛さんも盛り込まれた歌、「あゝ北前船」。
三波春夫が作詞しましたが、『男 命の北前船は 宝運びの心意気』とあります。
ではまた、来週金曜日に更新いたします。
皆様、どうぞご自愛なさってくださいませ。