このように、聖徳太子が作り上げた憲法は千四百年たっても生きている立派なものでした。実は太子自身、これを世に出すときは悲しい気持ちを抱(いだ)いておられたようです。出来上がった憲法を大勢の人々の前で発表するとき、太子はこんな挨拶をしました。
「なぜ私が万国にさきがけ、陛下のご承認をいただいて憲法を定めたか聞いていただきたい。これまで上代の人々は、帝(みかど)も臣(おみ)も正直な心で事に当たり、人民も邪(よこしま)な心を持たなかった。だから厳しい法律など作らなくても、世の中が乱れなかったのだ。ところが近年、人が増えてくるにつれて、堪(こら)えられぬほど世の乱れが甚(はなは)だしくなってきた。今がこのような状態では、今後はますます邪悪な者が現われ、人道を踏(ふ)み外(はず)す者が多くなるであろう。だからこそ陛下は、本日ここに憲法を公布することと遊ばしたのである。政(まつりごと)の乱れは国家の大乱。ゆえに天子の御心(みこころ)を載(たい)して、臣(おみ)として職分に励んでいただきたい」
立派な憲法を作り上げたからといって、満足しているわけにはいきません。だから聖徳太子は、とても複雑な気持ちでこの憲法を作られたのですね。
さらに太子は、自ら作った「憲法」という文字を、「いつくしき法(のり)」と読まれました。この法を守れば、人間として美しい生き方ができる、ということです。この意味を、公務員のみなさんに今一度噛(か)みしめていただきたいものです。
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