第3章・勝海舟 「恨みを残さず、徳を残せ」⑤

 ところで革命というのは、どんな国の例を見ても、旧体制の指導者が殺されることで一つの節目(ふしめ)を迎えるものです。フランス革命では、マリー・アントワネットがギロチンにかけられました。ロシア革命の際も、ニコライ二世が家族とともに処刑されています。革命では、そういうことが必要なのかもしれません。ところが明治維新にはそれがありませんでした。幕藩体制の象徴である将軍が殺されることもなかったし、老中が処刑されたりもしなかった。それどころか最後の将軍徳川慶喜(よしのぶ)は明治三十五年(一九〇二)に公爵の身分さえ与えられ、天寿を全うして大正二年に亡くなっています。あれほどの大革命だったにもかかわらず、遺恨が少しも残っていない。こんな革命は、古今東西、どこにも見当たりません。これは日本人の誇りとして、世界に胸を張っていいのではないでしょうか。


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