第2章大石内蔵助 仇討ちに込めた内蔵助の「覚悟」⑦

 大石内蔵助は討ち入りの直後、幕府大目付(おおめつけ)・仙石伯耆守久尚(せんごくほうきのかみひさなお)に「討ち入り口上書」なるものを届けています。これは、自分たちの討ち入りが持つ本当の意味を、幕府に認識させるために大石が打った一流の布石でした。

 「・・・・・・なお吉良上野介殿が健在であるにつけても、『君父(くんぷ)の仇はともに天を戴(いただ)かず』の儀、黙(もだ)しがたく、昨夜、吉良屋敷へ推参(すいさん)つかまつり、亡君の残念を遂げました。もし私どもの死後において、御検分遊ばすとき、一同の心中を何卒(なにとぞ)御理解賜(たまわ)るようにお願い申し上げます」

 口上書にはこのような文言が記されているだけで、あからさまな幕府の行政批判はありません。しかし、これを受け取った仙石伯耆守久尚こそは、浅野家断絶という厳しい処置を主張した人物。内蔵助が行間に込めた「これが、あなたがたの判断がもたらした結果です。どうお考えになられますか」というメッセージが、痛いほど胸に染(し)み込んだことでしょう。この口上書があったために、幕府は事後処置を大いに迷ったというわけです。


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