翌日、リコルドを伴って嘉兵衛さんが浜辺に上陸すると、平蔵と金蔵が陣屋から預かった文書を持って立っていました。ここでまた嘉兵衛さんが偉かったのは、陣屋からの文書をその場でリコルドに見せなかったこと。嘉兵衛さんもゴロヴニンの生死は知らないのですから、文書の内容によっては交渉が暗礁(あんしょう)に乗り上げてしまう。迂闊(うかつ)に見せて、もしゴロヴニンが死亡したなんてことが書かれていたら、えらいことです。だから嘉兵衛さんは文書を自分の懐にしまって、リコルドをいったん艦に帰らせました。自分の目と耳で陣屋の考えを確認し、改めてリコルドに伝えようと思ったのです。
「明日までにとはゆかぬかもしれぬが、わしは必ず艦に戻る」という嘉兵衛さんを、こんどはリコルドも心から信用しました。「日本の領土を踏んでみたい」とボートを降りたリコルドは、感慨深げにあたりを十分ほど歩いただけで帰艦しました。
【コメント】
この続きは、5月14日に更新いたします。
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