「ああ、よかろう。そうしたければ連れて行け。だが、それでは何も解決しない。おまえはまだ、わしらを捕虜だと思っている。しかしここは日本の国だ。そこが、おまえにはちっとも分かっていない。そんなことじゃ、ゴロヴニン艦長の釈放など夢よりも儚(はかない)い話よ」
その後もしばし二人の激論は続きました。最後には嘉兵衛さん、「ならば甲板(かんばん)に出て決闘しよう」とまで言い出した。そこに至ってやっと嘉兵衛さんの心の中を理解したリコルドは、手にしていた拳銃を甲板に置き、
「分かった、私が悪かった。タイショウのことをけっして捕虜だとは思っていない。どうか、その刀を納めてください」
と謝罪したといいます。相手を人間として信頼し、お互いの領土を尊重する。それが外交には大切だということが、やっとリコルドにも理解できたのでしょう。リコルドはカムチャツカ長官の立場で掠奪事件に対する謝罪文を書き、それを陣屋に届けてほしいと嘉兵衛さんに頼みました。しかし嘉兵衛さんは上陸を翌日に延ばし、その夜はリコルドと二人で夕食を取りながら積もる話に花を咲かせたといいます。
【コメント】
今ある長年の問題…、こういう風に進んで行けばよいのに…、ですね。
ではまた、来週金曜日に更新いたします。
明日17日、早起きの方々がお時間が許されましたら、午前5時40分からの10分番組、「NHK映像ファイル あの人に会いたい 三波春夫」でお楽しみください。
なお、番組は、緊急ニュースが入った場合、放送が差し替えとなってしまいますのでご容赦ください。