乗船の際にはこんなこともありました。さっさと乗り込んだ嘉兵衛さんを、リコルドが「タイショウ、いったん船を下りなさい!」と咎(とが)めたのです。命令が変更になったのかと嘉兵衛さんは慌てましたが、そうじゃありません。正式に迎え入れるセレモニーを準備する前に嘉兵衛さんが乗船してしまったので、リコルドは怒ったのです。
「日本の代表者に対して礼儀を尽くそうとしているのに、それを無視するとは何事ですか」
「なるほど、そりゃあ申し訳ないことをした」
納得した嘉兵衛さん、いったん船を下りてから、改めてリコルドとともに銃剣のアーチをくぐり抜け、将軍のように扱われて船に乗り込みました。これを見ても、いかに嘉兵衛さんが現地で立派な外交官として認められていたかが分かります。
【コメント】
次回は、国後島沖での出来事です。
また来週、金曜日に更新いたします。