第1章高田屋嘉兵衛 カムチャツカの民間外交④

 ペトロフスキー長官は丁重な態度で、そんな嘉兵衛さんの話にじっくり耳を傾けてくれました。面談の終わり際(ぎわ)には、同行した娘さんにこんなことを言ったほどです。

 「このお方は日本の代表者だよ。こんな偉い人に、今後またお目にかかれるかどうか分からないから、お別れのご挨拶(あいさつ)をなさい」

 すると十六歳の可憐な娘さん、嘉兵衛さんにパッと抱きつくと、頬にチュチュッとキスをいたしました。何事にも動じない嘉兵衛さんとはいえ、このときばかりはさすがに面食らい、どぎまぎしてしまったのではないでしょうか。

 そしてカムチャツカ半島の入り江の雪が溶け始めた五月上旬。ペトロフスキーとの面談で問題解決の糸口を見つけた嘉兵衛さんは、ディアナ号に乗って国後島へ向かいました。カムチャッカを出航するときには土地の有力者たちが港まで見送りに来たそうです。


【コメント】

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皆様、ご自愛なさってくださいませ。