嘉兵衛さんの潔(いさぎよ)い態度に、リコルドも態度を和(やわ)らげました。言葉はほとんど理解できなかったでしょうが、嘉兵衛さんの気迫は言葉を越えて相手の胸を打ったのだと思います。リコルドは親愛の情を込めて両手を差し出し、嘉兵衛さんに握手さえ求めました。
「私は上官救出のために来たが、解決の糸口が見つからない。本国政府と相談して改めて来日するつもりだが、それまで貴殿を捕虜としてカムチャッカへ連れてゆく」
抵抗されると思いきや、嘉兵衛さんは「よろしい」とあっさり承諾。しかも嘉兵衛さんは、「わしだけを連れて行け」という。これにはリコルドも困ったようです。「あなたは身分のあるお方だから、一人で連行するわけにはいかない。日常の世話をする者を連れてきてくれないと困る」と説得して、やっと四人の船員を同行させることを承諾させました。
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皆様、どうぞご自愛くださいませ。