「国後の陣屋が何の考えがあって死罪になったと申したかは分からぬが、私の知るかぎり、ゴロヴニン艦長は箱館(はこだて)の牢屋に入れられており、元気にしておられるはずだ」
リコルドが信用するとも思えませんでしたが、嘉兵衛さんとしてはそう言うしかありません。彼の確かな情報網によれば、それが間違いのない事実だったのです。
「そんなことが信用できると思うのか!」
案の定、リコルドは激高しました。
「信用する、しないは貴官の勝手だが、わしは嘘を言っているのではない」
嘉兵衛さんはそう言って、脇差(わきざし)を抜き、テーブルの上に置きました。
「わしの目を見ろ。人の先頭に立つ者の目に曇(くも)りがあってはならないのだ。わしの言うことを嘘だと言い張るなら、首を斬(き)られても仕方ない。さあ、これでわしを斬れ!」
【コメント】
この本に書かれたセリフはすべて、史実に基づいた構想にて、三波春夫が書いたものです。
「人の先頭に立つ者の目に曇りがあってはならないのだ」というセリフ。
そうですよね、今まさに、日本のリーダーの方々、頑張っていただきたい!!
ではまた、来週金曜日に更新いたします。