第6章・児玉源太郎 「この刀で俺を刺せ!」②

「いや山本さん、そう言わずに聞いてくれ。私は陸軍の首脳になってみて、つくづく海軍に対する評価が間違っていると思ったんだ。やっぱり陸軍と海軍は同等でなければならない。同じ目的に向かって戦わなきゃだめだ。海軍が協力してくれなけりゃ、ロシアとは戦えないじゃないか。旅順の東洋艦隊やバルチック艦隊、これを叩くのは海軍しかいないんだということを、頭の固い陸軍の連中に、私は事あるごとに説いているんだ」

渋沢栄一と同様、山本も児玉の真心に打たれました。内務大臣を務め、そして陸軍大臣まで務めた人間がそこまで言う以上、海軍もそれに報いなければいけない。そう覚悟を決めた山本が最初に手を着(つ)けたのが、連合艦隊司令長官の人事でした。ここに適材を置かなければ、ロシアと戦えないと判断したのです。

そのとき司令長官を務めていたのは、日高壮之丞という人物。自分より先輩の日高に、山本は「申し訳ないが、辞めてくれませんか」と頭を下げました。
これから大きな戦争をやろうというときに司令官を辞めさせるというのは、かなりの勇気と覚悟が必要でしょう。相手のプライドを考えれば、これほど失礼な話もありません。しかし、あえてそれを断行したあたりに、山本権兵衛が並みの人でなかったことを物語っています。


【コメント】

世の中、「やめてくれませんか」と言いたい対象人物は数々あれど…ですけれどもねぇ…。児玉さんは凄いですね。
ではまた、来週金曜日に更新いたします!