さて、勝つためにどうするか。長引けば長引くほど勝ち目は薄くなりますから、少しでも優勢になった時点で早めに戦争を切り上げ、日本に有利な形で講和条約を結ぶのが賢明なやり方。だからこそ児玉さんは、即座に使者をアメリカに派遣し、講和に向けて先手を打っておいたのです。
使者としてアメリカに飛んだ金子堅太郎は、ハーバード大学への留学経験があり、セオドア・ルーズベルト大統領とは机を並べたクラスメイトでした。だから話は早い。
「やあ、金子、よく来たな。それで何の用だ」
と気安く迎えられた金子堅太郎、さっそくルーズベルト大統領に用件を切り出しました。
「実は日本はロシアと戦争を始めたんです。しかし、普通に考えれば勝てる相手ではありません。勝機来たらば講和の仲立ちをしてくれるよう、お願いしたいのです」
ところが、大統領からは意外な言葉が返ってきました。
「いや、金子、わが国の陸海軍の情報部から上がってきた報告によれば、この戦争は日本が勝つということだ。だから、そう弱気にならずにしっかりやりたまえ」
「本当ですか、大統領」
「本当だとも」
あくまでも資料に基(もと)づく机上(きじょう)の理論とはいえ、米軍の情報部が日本の勝利を予想しているとは心強い。
大いに励(はげ)まされた金子堅太郎は、勇気百倍。あらためて講和の仲介を大統領に依頼し、帰国して伊藤博文や児玉さんに報告しました。
児玉源太郎は喜びつつも、さらに周到な準備を進めていきました。
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