第5章・二宮尊徳「借りない金を返しなされ」①

ここでまたエピソードをひとつ。

この桜町の領分でも横田村は最も貧しかったそうで、良かった昔に較べて半分の戸数、田畑は荒れ放題。村人の中にはその日の米にも事欠(ことか)く者がいるありさま。先生は哀れんで、何とかしたいと足繁く通って方策を講じました。この村の名主は円蔵(えんぞう)といい、代々、幾百年も続いた名主の家で村民からは尊敬されていたのですが、この時、家屋を建て直すこととなり、「二十両ほど金を貸してください」と先生に申し出ました。その時、先生はこう諭(さと)したといいます。

「おまえの村の貧しさをなんと見るのか。名主ならば思い悩むあまり自分のことなど考える暇もあるまいに、どうして家を作り直したいなどと思うのだ。親代々の名主の家の当主として、よく考えてみるがよい。村の長(おさ)としての務めは、村民を励まし恵みを施(ほどこ)して村を立派にすることです。それでこそお国に対しても忠義。人間として、愛の心を持つようにしてゆかねばなりません。条件を出しましょう。二十両は貸すが、今は金は出さない。まず向こう五年間に二十両に利子を加えてわしに返しなされ。成し遂げたならば、改めて、おまえの望むとおりにしてやろう」


【コメント】

この続きをどうぞお楽しみに!
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