第4章・平清盛 「青葉小枝の笛」②

「やれ待ち候(そうら)え、平家の公達。如何(いか)なるお方か知らねども、名のある大将と見受けて候(そうろう)。敵に背後を見せるは卑怯(ひきょう)なり。返させ給(たま)え。いざ勝負、勝負」

熊谷直実が扇を広げて呼び止めると、敦盛は手綱(たづな)を引き絞って渚(なぎさ)に引き返しました。負けて退却しているのですから、そのまま逃げてもいいようなものですが、このあたりが昔の戦さらしいところ。武士(もののふ)たる者、卑怯者呼ばわりされて逃げるわけにはいきません。

砂浜では、「太刀も弓矢も面倒じゃ」と言い放った直実が、素手で待ち受けていました。そこに、馬上から敦盛が飛びかかる。 しかし熊谷直実といえば、百人力とも言われた腕力の持ち主。あっという間に組み伏せて、兜(かぶと)をはぎ取った直実はその顔を見て驚きます。何と、自分の子どもと同じ年頃の少年ではありませんか。その美しい顔を目の当たりにした直実は、「やや」と呻(うめ)いて手を止めました。


【コメント】

この続きは、また来週金曜日に更新いたします。
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