第4章・平清盛 「「平家物語」が歪めた清盛の人物像」③

 そこでいちばんの被害者になったのが、清盛でした。スピード出世で頂点をきわめた強者(つわもの)ですから、「盛者必衰(じょうしゃひっすい)」の物語ではどうしても仇役(かたきやく)になりやすい。清盛に対して辛口(からくち)の表現をしたほうが、聴き手のウケがよくなるわけです。

 もちろん、当時は聴き手もそれが作り話であることを知りながら、語りの面白さに拍手喝采していたのでしょう。でも、初めは「芸」として語られていた物語が、歴史を経るうちに、史実を描いたノンフィクションとして語られるようになりました。そのために、清盛には気の毒な悪人イメージが広く定着してしまったのではないかと思います。

 どこの国にも民衆のあいだで語り継がれてきた物語があり、それは国の財産です。平家物語が、その一つであることは間違いありません。文学作品としても一級品で、戦国時代の物語や元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)と並ぶ国民的伝承物語だと思います。


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