平家物語の作者は、信濃前司行長(しなののぜんじゆきなが)とされていますが、それを指導したのは慈円(じえん)という名僧てす。そして慈円の兄が、『玉葉(ぎょくよう)』の著者としても知られている九条兼実(くじょうかねざね)。この九条兼実が残した日記が、平家物語の種本になったと思われます。藤原家のお方ですから、日記は平清盛とその一門に対してかなり批判的な立場で書かれていますが、関白(かんぱく)・九条兼実は少なくとも事実をねじ曲げて書くような人ではありませんでした。
ですから、最初から『平家物語』も清盛を悪人として描いていたわけではありません。しかしこの物語を琵琶法師(びわほうし)が語り歩いていくうちに、少しずつ内容が変化してゆきました。私もお客様の前で演じる立場ですから、琵琶法師の気持ちは分かります。聴き手の反応をたしかめながら、よりウケるように話を作っていくのは自然な成り行きでしょう。それが高じて、少しぐらい事実を曲げても、お客に喜んでもらったほうがいい。 その場の盛り上がりに応じて、即興的に話を作ることもする。
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では、この続きは来週金曜日に更新いたします。