第3章・勝海舟 「行蔵は我にあり」③

 何もしないのに三年分の給料をくれるというんですから、オランダ人にとっても悪い話じゃありません。ですから、「よく分かりました。勝さんの言うとおり、われわれは引き下がることにしましょう」という話になりました。

 すると勝は、彼らが帰国する際に盛大な送別会を開き、お土産(みやげ)と千両箱を差し出しました。一時は「国交断絶だ!」とまで怒っていたオランダの軍人さんたちは、それを抱えて大喜びで帰っていきました。

 ここらあたりが面白いですね。

 裏金(うらがね)を渡したようなものですが、結果、日本とオランダの関係がこじれることもなく、それこそ恨みを残さずに事が収まった。清濁併(せいだくあわ)せ呑(の)んで「実」を取る、勝海舟ならではのやり方だったと言えるでしょう。幕府の機密費をずばりとお国のために生きた金として使ったというこの話。私腹を肥(こ)やすことが第一という政治家や官僚の姿を見せつけられる今の時代は哀しいものです。


【コメント】

まだ「勝海舟」の話は続きます。
また来週金曜日に更新いたします。