第5章・二宮尊徳「十六年がかりの財政再建」②

さて隣の村まで尊徳一行を出迎えた地元の顔役たちは、酒肴で歓待しようと誘いましたが、尊徳はそれを断わりました。

「一刻も早く陣屋へ参りたい。せっかくだが心配しないでもらいたい」
お供をしていた勝俣(かつまた)という人が進言しました。

「二宮様、せっかくあの者たちがわざわざ出迎えて旅の疲れをお慰(なぐさ)めしようとしているのですから、お断わりにならなくてもよろしかったのではありませんか」

「そりゃ違う勝俣。真っ先にご機嫌取りにやってくる者たちこそ、腹黒い者どもじゃ。実直な者は呼んでもたやすく来はせん。 あの連中は、私が着任したことで今までの罪が露見(ろけん)することを恐れて、表に誠意を飾り、裏では私利を貪(むさぼ)ろうとしているのです。私は君命を受けて今日までに、密(ひそ)かに四度もこの地方を調べましたが、彼らこそ村を荒廃させた者たちです。過去にも復興の命を受けて、この地に何人も派遣されましたが、すべて彼らに騙されて失敗しています。見ていなされ、数年を待たずに彼らは尻尾(しっぽ)を出しましょうぞ」

尊徳の言葉どおり、彼らはことあるごとに尊徳仕法(そんとくしほう)《仕法とは財政再建計画のこと[注 1]》の実施を妨害したのですが、ついには村人から極悪人と言われ寂しく世を終わったそう です。この話は今の人間社会とまったく同じように思いますね。

[注 1]
報徳仕法とか各地の報徳会の主旨は先生の『徳を以て得に報ゆる』の言葉から名付けられた。


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